こんにちは、管理人のけいすけです。
今回は「発言小町」という掲示板サイトをご紹介します。
投稿内容や運営者を調べていくと、他の掲示板とはちょっと雰囲気が違うようです。
アングラに偏りがちなネット掲示板ですが、発言小町はその運営者と運営システムにより、他とは全く違ったコミュニティを作り上げています。
コミュニティの構成員には主婦が多いですが、5ちゃんねるの鬼女とはかなり性質の異なる女性の集団になっています。
彼女たちが発言小町で生んだ造語がリアルの社会に浸透し、テレビで取り上げられるなど、マスコミからリアルに繋がる流れも多く生み出しています。
発言小町を利用する主婦たちと、彼女たち取りまとめる運営者の正体を調べていくと、いち掲示板サイトの発言小町が社会に与える影響まで見えてきます。ぜひお読みください。
発言小町ってどんなサイト?
発言小町の開設は1999年10月と、ネットの世界でもかなりの古参にあたります。
開設当時のネットはPCスキルに長けた層が中心の世界で、必然的に男性比率が高いものになっていました。
そうした中で発言小町は「女性の悩み相談」というジャンルで台頭し、ネットに参入してきた「普通の女性(主婦)」のコミュニティとして発展していきました。
発言小町の特徴
ジャンル分けは以下の通りです。
- 話題
- 男女
- 子供
- 働く
- ひと
- 健康
- 美
- 学ぶ
- 口コミ
- 男性発
5ちゃんねるでスレッドにあたる議題は「トピック」(略して「トピ」)という開設当時に主流だった言い回しが現在でも使われており、結果的に非常にユニークな雰囲気を作り上げています。
返信は他のサイトと同様「レス」と呼ばれています。
「いいね」に該当する「これポチ投票」という機能もあり、
- 「面白い」
- 「びっくり」
- 「涙ぽろり」
- 「エール」
- 「なるほど」
の5つの感情に対する投票が行われており、感情別でランキングの集計・発表も行われています。
投稿は承認制で運営のチェックが入ります
投稿は運営者側のチェックが入ったうえで掲載されるというシステムが採用されており、コミュニティのアングラ化が意図的に避けられています。
一方で女性同士の過激な言葉の応酬がそのまま掲載されているケースもあり、是非の基準はいまいち不明瞭です。
チェックは人力であるため投稿から掲載までにはタイムラグがあり、開設当初は数日を要することすらあったそうです。
現在は運営側で体制が整備され、問題のない投稿であれば2時間ほどで掲載されるようになっています。
利用者層は鬼女とは似て非なる者
発言小町の利用者層は主婦・中年女性が多数を占めていますが、5ちゃんねるの鬼女(既婚女性)とは似て非なる存在と考えられます。
鬼女の特徴として、リアルの人脈とネットリテラシーの高さを活かしたリサーチ力がよく挙げられます。
そもそもお世辞にもインターフェイスが良いとは言えない5ちゃんねるを使いこなしている時点で、鬼女たちは一定の能動性とITスキルを擁しているとも言えます。
対して発言小町の投稿者たちを観察していると、
- 文章が散漫
- 人づきあいが下手
- 機械への苦手意識
- 疑似科学やオカルトを信用してしまう
など、リアルの世界でたびたび出会う(ネットではあまり見かけない)「おばさん」のキャラクター像を持っていることに気付きます。
逆に考えると、そういったネットの世界で排除されがちな女性たちの憩いの場が、発言小町であると解釈することもできるでしょう。
発言小町の投稿は?独自の用語が多数
発言小町は歴史の長さと投稿者属性の独特さから、さながら「2ちゃん語」のような独自の造語が多数登場しています。
また、それらの造語が女性を取り巻く社会問題・家庭問題に直結した内容であることから、マスコミを通して一般に浸透する新語となることもあります。
ここからはそんな発言小町の用語をご紹介していきます。
「続き前ですが」「横ですが」
発言小町は一投稿800字という文字数制限があり、それ以上に伝えたいことがある場合は複数の投稿にまたがって話を続けていくようになります。
ですが、続きがあると明言している投稿に対してもシステム上はレスを行うことができ、話の続きを待たずにそこまでの経緯を見て返信を始める参加者も多いです。
そこで、そのような返信の際に「続き前ですがごめんなさい」と断りを入れるというやりとりが文化になっています。
また、話が横道に逸れる際に「横ですが」という言い回しが行われることがあります。
ネット上で一般的に横レスというと、すでに始まっている会話に「横槍を入れる」という意味になりますが、発言小町内では独特の意味合いが醸成されています。
これらの断りは非常に日本人的・女性的な「お作法」とも取れますが、理屈で考えると「いや、続くって言ってるんだから最後まで聞けよ」「本題から逸れるなよ」と、議論型のコミュニティが多いネットにおいては異端で、ばかにされがちな振る舞いでもあります。
「義実家」「ボスママ」
結婚相手(主に女性にとっての夫)の父母を「義父」「義母」と言いますが、それら家族をまとめて「義実家」と呼びます。
従来の日本語ではありませんが意味は類推しやすく、女性同士の会話では非常に便利な用語なので、発言小町内では多用されています。
また、幼い子供を持つ女性は、幼稚園・保育園・学校など子供側のコミュニティに参加せざるを得ず、母親同士の繋がりを表す「ママ友」は今や一般的な現代語となっています。
そんなママ友コミュニティ内でリーダー格を担う者は「ボスママ」と呼ばれます。
想像に難くないことですが、「義実家」「ボスママ」の身勝手・非常識・価値観が合わない振る舞いは多くの女性にとって悩みの種であり、発言小町にはこれらの相談が絶え間なく寄せられています。
「合格菌」「妊娠菌」
懐妊や、子供の受験の合格など、女性にとって喜ばしい出来事を経験した人が、その幸せをお裾分けしたいという意味合いから、幸福を菌に見立てて「合格菌」「妊娠菌」を「お分けします」といった発言が行われるようになりました。
「菌」を分ける方法としては、神社などの特定のスポットを訪れたことを発言小町内で報告し、別の人が訪れることで「うつした」とみなす「験担ぎ」が挙げられます。
しかし、行為は次第にエスカレートしてゆき、
- 「保菌者」が「菌」の付いた私物や料理を送る
- それら物品の売買が始まる
など、アングラ系とはまた様相の違うモラルハザードを起こしていきました。
- そういった尋常ではない犯罪類似行為が横行していること
- 「菌」という言葉選びが科学的な知識の欠如を連想させること
- 怪しい宗教や占いを信じて依存してしまう不用意な女性像
などが重なり、「合格菌」や「妊娠菌」などは、発言小町外の掲示板やSNSでたびたび嘲笑の対象として取り上げられる言葉でもあります。
「毒親」
子供を押さえつけて支配しようとする親を指して「毒親」という用語が誕生しました。
ここで言う「子供」とは幼い子供に留まらず、成人後の進学・就職・結婚にまで親が支配的に介入し、子供の人生そのものをコントロールし始めるという深刻さを含みます。
こういった「毒親」の言動は、
- 子供が幼いと周囲には教育熱心な良き親と映ることが多い
- 成人後には家族との相当な親密さがない限り他人からは異常性が見えづらい
このような理由から、古くから存在していたかもしれないものの、表面化しづらい家庭内の問題でした。
また、毒親と子供の関係性は「母と娘」であることがほとんどです。
反抗期に明確な精神的距離が出来上がる「父と息子」や、全てを理解し合うことが難しい異性の親子間では起こりづらく、女性特有の現象であると言えるでしょう。
そういった毒親の言動に疑問や苦しみを感じていた娘たちが、ネット、とりわけ発言小町という発信の場を得たことで、徐々に多くの女性が悩む問題であることが表面化していきました。
ニュースとしてマスコミに取り上げられたり、毒親を題材にしたドラマが制作されるなどして、急速に広く認知された社会問題となっています。
親の意見など突っぱねればいいという見方もありますが、
- 幼いころから洗脳に近い教育を受けてきた娘にとっては反抗すら難しい
- 話し合いで過去の清算を行っても年老いた母親が落ち込むばかりで後味が悪いだけに終わる
などの理由から、血縁や年月の長さが関係して円満解決が難しい問題であると言われます。
発言小町の運営者は誰?
独特のシステム・コミュニティを持つ発言小町の運営者が誰なのかが分かると、発言小町という掲示板の全貌が見えてきます。
どこかリアルの社会に近いその立ち位置も明らかになりますよ。
運営者は新聞社で発言小町は投書欄のネット版だった
発言小町の運営者は、マスコミ大手の読売新聞社です。
発言小町はYOMIURI ONLINE内の一コーナーという扱いながら、単独で月間PV数1億に迫るお化けサイトとなっています。
投稿は掲載前に全て編集部員がチェックしており、新聞の編集方針をそのまま採用している為、ネットの世界でも非常に異端な、マスコミ的な掲示板サイトとなっているのです。
開設当時は紙の新聞をそのままネットで読めるようにしたYOMIURI ONLINEに沿い、「新聞の投書欄のネット版」という立ち位置で、発言小町とその親コーナーである大手小町を立ち上げたと言います。
旧2ちゃんねるなどがアングラ系の男社会であったこともあり、大手新聞社が運営する女性向けの発言小町は独自のユーザー層を開拓していったのです。
まとめサイトと揉めた過去がある
発言小町は非常に大きなコミュニティを形成したこともあり、当然のように非公式のまとめサイトも立ち上がりました。
特に「発狂小町」というまとめサイトは人気を博し、「発狂小町」が発言小町の存在をさらに広めたという側面がありました。
読売新聞社の担当者は、(著作権侵害は見られるものの)発言小町の良さが要約されたサイトであったため、公式認定や共存の道も考えたと発言しています。
しかしながら「発狂小町」はタイトルからも想像できるように、発言小町の投稿の中でも一部の女性が持つ異常性を取り上げて面白がる意図が見られました。
実際に投稿者からの苦情が寄せられたことから、読売新聞社は該当プロバイダへの削除要請を依頼し、「発狂小町」運営者もそれを飲む形でまとめサイトは閉鎖されることになりました。
商品化や広告展開も
発言小町が多大なPV数を誇るサイトに成長したことから、読売新聞社としても当然のようにサイトそのものの収益化へ舵を切っています。
たとえば、
- ウィスキーのCMとコラボし「ウイスキーを飲むのってどんなとき?」
- マンション販売に関連した「あなたは賃貸派?それとも購入派?」
などのようにスポンサーの商品について運営者から質問を投稿し、利用者に意見を募るという企画も行われています。
ちなみに、運営者からの質問には、タイトルに「【PR】」の断りが入れられています。
テレビに取り上げられやすい
- 新聞社が運営するサイトで情報がある程度は整理されている
- テレビの主なターゲット層である中年女性・主婦と利用者が合致する
これらの点から、発言小町の投稿がテレビのネタに使われるのは必然と言えるでしょう。
先に触れた「義実家」「ボスママ」はお昼のワイドショーでは普遍的なテーマであり、「毒親」も近年では女性の関心が高い問題です。
発言小町やそのまとめを日々読んでいると、テレビで「あの事だな」と思う番組に当たるようになるでしょう。
まとめ
女性向けの掲示板「発言小町」についてご紹介しました。
発言小町の投稿には、男性には理解しがたい女性の文章構成や、非科学的な発言も散見されるため、しばしば他の掲示板やSNSで晒されて批判されることもあります。
しかし、かつての2ちゃんねるが日陰者にとって安息の地であったように、発言小町は女性たちの「生の声・悩み」を受け入れてきた場です。
発言小町に救われたという女性も少なくはないのではないかと思われます。
お互いの縄張りを荒らさないという協定を守りつつ、有益な情報は交換し合うというのはリアルでもネットでも同じことでしょう。
特に主婦向けの商売をしている人は、読むと参考になるかもしれません。
「面白いネタ」についつい手が伸びでしまうのも、人間の性ですし、ね。